<><><><><><><><><><><><><><><><><><>

はさみ石神社2020/01/11

彼は最近、知り合いから神社の鳥居の製作を頼まれたそうで、作業場では柱にする2本の丸太と横に張る2枚の分厚い板が目につきました。丸太は既に皮を剥いで粗削りされ、横になっています。梁にする板も独特の“そり”が入っています。

 

作業エリアに敷かれた数枚のべニア板の表面に幾つもの線が引かれ、それを目安にして組み立てるのだそうです。彼が見せてくれた図面を見ると、笠木(かさぎ)だとか、貫(ぬ)き、転(ころ)びだとかの妙な文字が並んでいます。それに寸法や直線・破線が入り組んでいます。

 

彼は先の台風で傷んだ屋根などの修理依頼がこの町に結構あって今は多忙をきわめており、その合間を縫っての製作だから完成まで大分日数がかかると、依頼主に伝えてあるという。またその依頼主というのが奇特な人で、それでも構わないからとのお墨付きをもらってあるそうな。彼は絶大な信頼を得ているようです。

 

この鳥居は、実は東伊豆町の奇岩として知られているあの“はさみ石”のためのものだと別の知人から聞いて、私もその気になってここにやってきたのでした。厳密にいえば、はさみ石を神格化させるものと言ってよいわけです。ただし、“はさみ石神社”は昔、実際に存在していたらしいのです。

 

“はさみ石神社”については、あの旧稲取灯台の資料館にその神社の存在を示す古い写真があって、私も驚いたことがあります。鳥居を後ろに関係者一同が並んだ写真です。“はさみ石神社”とはっきり書いてありました。それを見て以来ずっと、鳥居はいつ頃撤去されたのかも含めて、どの場所に設置してあったのか宿題になっていました。

 

はさみ石がある現場へ行ってみれば解るように、この大岩は波打ち際にあって、しかも陸側は切り立った大きなガケです。鳥居を現場に立てる余裕は全くありません。立てるとしたら、神域を考えればはさみ石の真上にある展望デッキの海側しかないでしょう。それも余裕が殆どないのではないか?

 

それとも、そのデッキから旧道を西に向かい、小さな尾根が海側に落ち込んでいるルート(現場に直接下りるにはこのルートを進みます)上に設置するのか?いずれにしても難しい所です。

 

製作依頼を受けた彼によれば、依頼者は最近でも何度も現場を訪れては写真を撮ったりして相当の惚れ込みようだということでした。依頼主は熱川の会社経営の資産家のようですから、鳥居も悪くはないですが、その前に現場付近の環境整備に投資してくれないでしょうかね。あの現場の周りには“負の遺産”もあるのですから。