ならいの風に寺八つ、そして ― 2020/10/20
はまべ便り 第一回 「稲取港は我が庭」 鈴木 文雄作
前は大島、後ろは天城の峰続き、秋は山に蜜柑が色づき、港は稲取名物金目鯛、伊勢海老、栄螺(サザエ)、また地魚が市場に上がり、その上、温泉にも恵まれ、温暖な地なので観光地として全国に知られています。
稲取港は当館、はまべ荘の庭のようなもので、朝夕に出船入船が見え、漁師の姿に活力を感じとることが出来ます。夕闇迫る頃、青と赤の灯台が波間を照らし、薄明かりの中で郷愁に誘われるような気持ちになります。そしてまた、月明かりを受けた漁船の影が波間に揺れて、なんとなく自分の心がそこから投影されたかのような錯覚を覚えることがあります。こんな田舎の小さな漁港で自然を目の当たりに幸せを感じて時間が止まったようです。
稲取は古くからの町で他にも自然がいっぱいあります。地元方言で「こらっしぇい稲取」です。稲取名物、ならいの風に寺八つ、そして何より嬶(かかあ)天下。冬に北東(ならい)の風が吹くと、一週間も漁船が漁に出られない日が続くことがあります。港を取り巻くように成就寺、済広寺、清光院、善応院、吉祥寺、そして正定寺が並んでいます。徒歩で回って五分以内にあります。あとの二つ、栄昌院と蓮行寺は少し離れていますが、これほど寺が多いのは全国的にも珍しく、昔はそれだけ寺を支える町が豊かだったと言えると思います。
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近年は人口が少なくなり、寺は寺で観光のお客様に来ていただけるようにそれなりに努力しております。是非お寺さん巡りをしていただきたいです。この町の一番良い所は女の人が北東の風より強く、人情に厚い立派な女性が多いことです。そんな土地柄は八ケ寺の功徳かもしれません。
北東の風吹く黒根の岬
海防の松もゆれている
夕陽が陰る三筋山
灯台灯りに海鳥が
塒を探す稲取港
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