主人の友達 ― 2020/12/25
********* 鈴木文雄作 **********
<熱川のさくら坂から前方に大島 12/25>
コネコの気持ち第3回 主人の友達
主人の一番の友達は苦労人のSさんです。一週間に三回ぐらい、私が玄関前で寝そべっていると「いるか?」と言って入ってきます。人情に通じ、何事にも寛大で心の広い思いやりのある方だと、家中の人は言っております。私は猫で口がきけないので、ただその人の顔を見ているだけです。じっと見ていると、その人の心がわかるような気がします。苦労人は生きている者の面倒を実によく見、心の優しい人だなと私はいつも思っています。猫でなかったら、こんな人と話がしたいと思います。
私はこんな人達が来てくれるこの家が好きです。お坊さんも二、三人たまにはやって来ます。お坊さんは死人の面倒をよく見て下さいますが、死んだ人は何も申さないので、その辺、楽な稼業です。苦労人は実に世間のことを良く知り尽くし、生きた仏と言っても過言ではありません。猫である私も主人と同じ考えです。人間というやつは欲があり、実にやっかいな生きものです。気にくわぬと水をかけられたり、けとばされたり、あぶない所には近づかないようにしています。お坊さんも欲があり、お布施が少ないの高いのと言うことを少なからず聞いたことがあります。猫の世界では他の猫のことをこうしてやろう、ああしてやろうと言うことはありません。人間という動物は実にやっかいな生きものです。
主人の友達Kさんの話を良く聞きます。稲取生まれの人より稲取のことを良く知り尽し、ほんとうに研究熱心の学者のような人だと言っております。こんな人とも話が出来たらいいなと、猫の私はいつも思っています。Kさん、この旅館にときどき来てください。主人を通して私は話の出来ることを願っています。
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