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倶会一処 ― 2023/08/23
(一)
それは「倶会一処(くえいっしょ)」(ともにひと処に会す)と刻まれた堂々たるモニュメントを頭に頂いていた。期待した通り、そこに彼の名前が刻まれていた。並んだ名前の一番右端の真新しい刻印だった。私は「ああ、やっと会えた」と思った。何故なら、先月、仲間の一人が案内してくれた時は彼の名前が未だ刻印されてなかったからだ。しかも、今朝は場所がこことわかって、立て込んだ墓地の中を確かに迷うことなく辿りついていたはずなのに、彼の名前を見つけることが出来ず、一度入口まで戻って石段を上り直し同じ石板にやっと見つけたのだった。最初見落としたのには理由があった。仲間が案内してくれた日には未だ刻印されてないのを承知のうえで参上したのであって、その後、黒い大きな一枚の御影石に小さな名前が並んでいるという間違ったイメージが、どういうわけか私の脳裏に定着していたのだった。花束を供えてから、般若心経を一通りつぶやいて墓前から退いた。
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