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クロアゲハ2019/07/30

XXさんの畑、そして大長Xさんの畑を見ながら上がって行くと、ひと気を感じたのか、右手の車寄せにひとかたまりになっていた大型の蝶が舞い上がった。そこは上り坂になっており、上から流れてきていた水がコンクリートの表面をうっすらと何かの影のように濡らしていた。

 

全部で4頭のチョウはクロアゲハと思われる。一頭だけ羽が青っぽく見えたのはカラスアゲハかな? こちらが歩みを止めたら、すぐに舞い戻って今度は別々に2頭ずつ組んだ形でコンクリートの表面に吸い付いた形で動かない。乾き始めた表面でも水分補給に十分なのか?それとも他に目的が?

 

この時期は大型のチョウの活動時期とみえて、赤坂いろは坂を通るとたいていは何頭かでたむろしている。それも、水で濡れているコンクリートの表面に吸い付いている時が多い。先日は他のアゲハチョウに混じって2頭が極めて近接して並んだままでジッと動かない姿勢をとっていた。

 

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入谷での今回は、何かが始まるのではないかという僅かな期待でそのままジッと動かないで見ていると、先方もジッと動かない。カメラを向けたら、4頭とも同じように飛び上がることもなく、少し羽を動かしただけで又ジッと動かない姿勢のままである。そこで、わざと大きな咳を発してみた。しかし、予期に反して微動だにしない。それではと、また手にしているカメラを少し動かしてみると、すぐに4頭とも反応して羽を少し動かした。聞く耳をもたないせいかな?

 

時間と根気があれば、そのまま観察を続けたいところであるが、いい加減で未知のクロアゲハくん達とはバイバイして先ヘ進む。急坂が始まるところで振り返る楽しみがあるのだ。手前の大長Xさんの広い畑の上に「ふれあいの森」のコトリのランドマークが見える。その右手には稲取高校の校舎と体育館、そして伊豆東部病院。

 

かつて幾たび、この景色を振り返ってみたことか。今や年古りておぼろげになった情景があふれるように我が脳裏を去来する。目の前の畑には鬱蒼としたミカン畑が広がっていた。「・・・私の本好きが娘に影響したんでしょうか。彼女の遺品の殆どは本でしたの。2トントラックにいっぱいだったわ」収穫が終わったみかんの木は青々としていた。その木をバックに、彼女は少女のようにカメラを前にしてはにかんだ。

 

あの時のあの女史が亡くなってもはや数年になる。今そのみかん畑は大きく変わろうとしていた。(つづく)