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オリーブ畑2022/09/09

     ”おおぶら峠”より 夕刻迫って爪木崎方面がはっきりせず

奥入谷の独活峰が南に落ち込む標高230メートル前後の場所は、東のバリカン山や更に東のコトリのランドマーク下の展望テラスとほぼ肩を並べた小高い山の中にあります。国道から歩いて上がってくると、この辺りから南海上方面が切れ切れにのぞいて、達成感とともにホッとした気分になります。 

そんな場所の幅広くなった道路際に或る人物の後ろ姿が見えてきました。座って作業しています。Yさんではないか?と思いながら近づいて声をかけます。三度繰り返してやっと振り向いてくれたお顔に、間もなく笑顔が浮かんでホッと安堵いたしました。陽に焼けて赤銅色のそのお顔には皴はなく、頬も盛り上がって色つやが素晴らしい。同じ入谷の農家で先年引退したMさんのお顔を思い浮かべました。Yさんは私より確か5才上でしたから現在86才。振り返って右耳を突きだしたので、私と同じように左耳が少し遠いようです。 

その場所から300メートルほど上がった所にある“おおぶら峠”は独活峰が南に下ってくる途中、南西の方角に枝分かれした尾根側にあって、“ひらなみHW”で一番の景色の良い所。この峠に立って海側を眺めると、手前に飯盛山や愛宕山の間に入谷の部落の風景や、海上に爪木崎や下田の白い砂浜が浮かんだ絶景を見通すことが出来ます。 

この峠の直下にあったミカン畑が、突然姿を消してオリーブ畑に変身したのが2014年3月のことでした。そして間もなくこの北側の斜面にもオリーブの苗木が植え付けられました。その後、シカなどによる被害に対処しながら順調に育って行くやに見えました。ところが、4~5年後に見込まれた収穫期を過ぎてからでしょうか、その後の下段のオリーブの木に樹勢が無くなってゆき、ついに殆どが跡形もなく始末される運命となりました。ただ、道路を隔てた上段のオリーブは立派に繁茂を続けて現在に至っています。 

その辺の事情をこのたびYさんに聞いたら、実は下段の方がその後、思わしくなく上段の方は伊豆急に任せることにして結局、オリーブから手を引いたと言います。下段の方の不作は害虫や土そのものに問題があったのではないか、と言うことでした。折角伊豆急と提携して東伊豆にオリーブを広めようと始めたのが、Yさん自身も高齢で活動出来なかったのではないか、そしてまた、Yさんの会社は既にご子息が引き継いで、オリーブの分野に手を伸べるマンパワーの余裕がなかったのではないかと想像されます。 

夕方の陽も傾いて、「この辺の刈込みをやっておかないとな」と言いながら、彼は体を元に戻して作業を再開しました。久しぶりにお会いして元気なことを確認しました。またいずれお話を聞く機会があるでしょう。