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才槌の頭め!2022/12/22

時刻は9時半。駐車場からいよいよ出発である。早くもA氏が先頭を切ってずんずん先を行く。ところが、彼の後ろ姿を見ると長身の故か、あたかも散歩しているかのように相変わらずゆっくりとしたリズムを保っている。S氏がその後を追って、私が3番目。しんがりがY氏で、これが上りの時の定位置で、下りはS氏とY氏が入れ替わる。S氏には膝にハンデがあるので下りが弱い。Y氏の場合は肺にハンデがあって、聞けば深い呼吸の連続は無理らしい。ただし、下りになると別人に変身する。鍛えた体力がものを言っている印象である。 

間もなく車道が切れて山道になると東側は灌木、そして西側が竹林となる。この竹はモウソウ竹のようだが、まだ若竹なのか幾分細くて節と節の間が短い。竹林から漏れて来る日の光で足もとは勿論、全体に明るく気分がどっと乗ってくる。そしてまた暫く行くと、灌木に入れ替わった。先頭の2名が後続を待っていた。私が追い付いたとき、S氏があれはモミの木では?と指さした。今年も間もなくクリスマスだ。4人合流して休憩後、暫く行った所に看板が立っていた。「緑の風は心の詩」とある。確かにこのハイキング道には「緑の風」がある。風が穏やかな今日でも。何はともあれ、ホッとする登山道なのだ。

途中、一人のハイカーが上って来た。でっぷりした体つきの65才前後のオジサン。かなりの汗をかいていた。それなりのスピードで上がってきたに違いない。東京から来て宿をとったという。わざわざ東京から来るほどだから、全国の低山歩きにはまっているのかも知れない。当方も、これからは低山歩きしかできないだろう。あと僅かな晩年をどう選択してゆくか、自分自身のことながら興味がある。 

「才槌の洞」と書かれた看板があった。昔この上に洞があり、その前の大石に才槌の頭が彫られていたことから、このホラのことをそう呼んだそうだ。「才槌」とは知らなかったが、調べてみると木槌のことらしい。「才槌の頭」というのは詰まり、オデコと後頭部が出っ張っている頭のこと。「才槌の頭め!」と言って相手をさげすむとき等に使われるようだ。「さいづち」と入力したら「才槌」と変換されたので驚いたほどこの言葉に私は無知だった。それこそ「才槌の頭め!」だった。

それはともかく、この辺りの登山道の下を車道が走っていた。それが熱海新道だった。今回訪れる予定の「氷ケ池」方面(伊豆スカイラインの玄岳IC)と、熱海市街地の南端(錦ヶ浦・熱海城付近)とを結ぶ路線である。そしてこの橋梁を通過すると、いよいよクマザサの道を行くことになる。この先、氷ケ池への分岐点が近いと感じられたころ、若い人が、やはり汗を額に光らせながら降りてきた。玄岳頂上から氷ケ池を周り、急な登りをクリアして分岐から降りてきたらしい。この若い人は仕事が休みの平日を利用して山歩きをしているとのこと。相模原市相模大野の人と聞いて、上鶴間出身のS氏の目が光った。暫く話が続いて別れたのだった。 つづく