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「貝殻の歌」2014/02/12

作詞:和合亮一
作曲:伊藤康英

あなたに 貝殻を そっと 手のひらに 渡したい
そして そっと 悲しみを 私に 渡してほしい
終わらない この星の この星の 悲しみを 想っています
悲しみを あなたのことを 想っています

命よ この星よりも重たい命
命の はかなさを知って 泣いているあなた
私も 共に泣きましょう 共に
あなた あなた 大切なあなた

貝殻にも 光にも 雲にも 牛にも 駅にも
街にも 船にも 私にも
この地球よりも 重い命が 重い命がある

命よ この星よりも 重たい命
命の はかなさを知って 泣いているあなた
私も 共に泣きましょう 共に
あなた あなた 大切なあなた

あなたに 貝殻を そっと 手のひらに 渡したい
そして そっと 悲しみを 私に 渡してほしい
そっと 渡してほしい


NHKでいつも流れる「花は咲く」は被災地や被災者のための応援歌だと理解していましたが、この「貝殻の歌」も東北大震災で不幸を背負わされた人たちへの鎮魂歌だったのですね。

去年の暮れに女房殿から今年6月にコーラスで歌うことになったと聞いて、ネットで聴いたのが最初のことでした。実際聴いてみると、ソプラノ歌手の歌唱力にもよるのでしょうが、魂を心底から揺さぶられたような深い感動を味わいました。

ざっと詩を読んでみると、その語調は静かに静かに、優しく優しく響いてきます。被災して生き残った人もいれば亡くなられた方々も含めて、悲しみを背負ったすべての人たちを優しく包んでくれようとしています。

しかし、この詩は曲想とともに痛烈なまでに“或るもの”を人に強く訴えかけているような気がします。「この星よりも重たい」はずの命のはかなさは即ち「終らない この星の悲しみ」(この星が背負った永遠の悲しみ)です。それは普遍的なものを意味し、しかもフェアでなく不条理でさえあると心の底から叫んでいるのではないでしょうか?

そして、その不条理な現実の世界に生きるものとしては「共に泣」いて、あなたの悲しみを共有するしかないと、悲痛な気持ちを吐露しているような気がします。貝殻をあなたの手の平に渡す代わりに、あなたの悲しみをもらい受ける優しさに泣かされます。

2011年3月11日に発生した東北大震災では多くの尊い命が失われ、未だに復旧もままならない状態が続いています。原発の問題も含めて現代文明の是非が今問われています。せめて人災による不幸だけは絶対に避けなければなりません。

今後、この「貝殻の歌」は暫くの間、私の頭の中に響き渡って消えることはないでしょう。何故なら、この歌が東北大震災の被災者に対してだけでなく、普遍性を持っていると思うからです。