カグラ岩 ― 2012/05/21
アスド会館から南に派生した尾根が南東に向きを変え、その後、急に海に落ち込んだ先には特異な岩礁があります。トモロ岬の先端です。角度によってはライオンに見え、またオバアサンの横顔にも、鷲鼻のインディアンにも見えたりします。土地の人はこれをカグラ岩と呼び、昔、悪童どもが遊びの対象にして親しんだと聞いています。
私は過去2回、この岩床に降りたことがありますが、一衣帯水の対岸カグラ岩そのものには渡ったことがありません。カグラ岩を目前にして、その間の深い溝を覗くと、左右から海水が怒涛の勢いで押し寄せ、渡ることはとても至難の業だと半ばあきらめていたのです。しかし、5月の大潮を狙えばそれが可能だと知ってから、ずっと満を持していました。
今朝は金環日食で全国的に大騒ぎでした。残念ながら稲取では雲が晴れずその瞬間を目で見ることが出来ませんでした。しかし、今日、太陽と月と地球が一直線に並ぶということは大潮でもあります。実は、金環日食よりもカグラ岩渡礁を秘かに狙っていました。下田のデーターとして、5月21日は干潮が11時20分。潮位7だそうです。
旧灯台の脇から尾根伝いに降りてゆくと、しっかりした固定ロープがずっと岩礁まで渡してあって助かります。そしてカグラ岩を目の前にすると、やはり感激です。大自然の威容に心打たれるものがあり、身が引き締まる思いがしました。
時刻は10時半。早速カグラ岩の膝元を覗きます。確かにいつもより潮位は低く、溝の中ほどに手ごろな、いや“足ごろ”な岩が頭を出しています。しかし、未だ足元が濡れそうなので少し待つことにしました。
その間、“はさみ石”側に岩をへつってゆけないか、確認してみることにしました。以前にも近くまでトライして無理だとは分かっていましたが、大潮の干潮時はどうか、あるいは成功するかもしれないという一縷の望みがありました。
でも、やはり、最後のもう一歩で引き返さざるを得ませんでした。そこは2メートルほどクライムダウンしてから1メートルほど飛び降りる必要がある岩で、そこから下を見下ろすと干潮のため頭を出していた着地出来そうな岩に、ワカメのようなものがいっぱい付着していて明らかに滑りそうだったからです。そこに着地出来れば、はさみ石の波打ち際はすぐ傍なのに・・・残念!
さて、引き返してカグラ岩に挑戦です。戻ってみると、幾分汐が引いていました。タイミングを見計らって飛び移り、ついに対岸のカグラ岩へ上陸に成功しました。足元は濡れずに済みました。さあ、次はオバアチャンのオツムへゴーだ!
先ず向かって左側から右斜めに攻めて行きます。首から顎にかけて難なく這い上がりました。かなり高度感があります。その先は、しかし、簡単ではありません。遠くから見ると、草付きのところが髪の生え際に見える、その線に沿って攀じるのがベターと思われました。
しかし、逆層の岩のクライミングには確保のためのツールが必須です。今回は何も用意してませんので、いさぎよく後退しました。
つづいて、平床に降りて右から左へ回り込んでみました。そして南端に立ちました。トモロ岬は東南に張り出していますから、正確にはその東南端に立ったということです。風が少し強いです。
カグラ岩のオバアチャンは北東を向いており、背後に回ると北西の方角になります。その方角に首のところまでは容易に上がれました。でも、あと約2メートルの頭の部分はオーバーハングしています。頭頂の斜めの部分に手がかりが多少あり、足がかりがなくても何とかずり上がれそうです。
しかし、ここは風当りが強く、バランスを崩したら東の方角は高度感ある海。気力が今一つ湧いてきません。やはり、安全に登るにはロープが必要です。今回は撤退することにしました。また機会があるでしょう。ついきのうまで風は弱かったのに・・・。
オバアチャンの台座に降りて岩溝を覗くと、未だ間に合いました。寄せる波も穏やかです。タイミングを見計らって対岸に飛び移りました。先ずは離れ島(岩)から無事生還です。今日はカグラ岩に渡ることが出来て充分満足できました。
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