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「ハティのはてしない空」2012/11/19

「ハティのはてしない空」カービー・ラーソン 作 杉田七重 訳

幼児期に両親を亡くし孤児となったハティは親戚を次々と渡り歩き、16歳のとき、伯父の遺言を受けてアメリカ北西部のモンタナに単身向います。320エーカーの土地の開拓を引き継ぐ決心をしたのです。

1918年1月から12月までの一年間のこの物語は厳しい自然との闘いから始まりました。しかも、この頃は第一次世界大戦の末期で、愛国の嵐が開拓地の住民の間に吹き荒れていました。ハティはそうした受難を隣人たちと支え合って何とか切り抜けてゆきます。

「はてしない空」のテーマは、あの「大草原の小さな家」のそれに共通しています。でも、「大草原の」ローラには家族がいましたが、この物語はハティひとりでした。そしてついに、“根無し草ハティ”が自分の居場所を求めた闘いと努力は土地を失うという結果に終わります。

しかし、彼女の隣人への惜しみない愛とともに、隣人からの愛が自分の居場所であったことに気づき、満足しながら別天地へと向います。今やもう、“根無し草ハティ”ではないのだと。

この物語は著者の曾祖母の実話が元になっています。ただし、曾祖母の場合は開拓に成功しています。著者は成功や失敗よりももっと大きな意味を“自分の居場所”を求め続けたハティの生き様に重ねたのではないでしょうか。16歳の少女の挑戦の物語を幸せな気分で聞かせてもらいました。