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モノ知りな彼 その22025/05/16

              ???

今回、いきなりのお説教を受けたのは私の両手がフリーハンドでなかったせいだ。左手に小型カメラを持つのはいつものこと。ただ、右手に空の缶コーヒーを持っていたから両手が塞がっている姿を指摘されたわけである。生け簀施設の前にある自販機の空缶用のゴミ箱に入れるためだった。苦笑いをしている私に彼は話を続けた。 

「ヒヨドリがね、最近、暖かくなってもあちこちで見るんだよ。いつもなら、夏が近づくと姿を消すんだがね」私は稲取に来てムクドリとヒヨドリを度々見ることが無いので、イソヒヨドリのことかね?と聞いたら、「いいや、ヒヨドリだよ。イソヒヨなら囀りがうまいから大歓迎さ」

そう言えば、きのう「こらっしぇ」の前でオオバンが泳いでいるのを見て、5月も中旬なのにまだ居残ってるんだと、いささか驚いたのを思い出した。日差しは確かに段々と強くなってきてはいる。しかし、海水の温度が追い付いてきていないのかなと、内心怪しい理屈を付けてから、私の方から文化公園の話を持ち出した。 

「きょうの散歩は文化公園だ。ギンムクが見れるかもと思ってね」と言ったら、彼が「文化公園までなら往復で1時間だね。結構歩くじゃないか。ギンムクの後、ヤツガシラが来たんだってよ。新聞に載ってたよ」私はそのニュースを知らなかった。新聞には載ってなかったはずだが・・・。モヤシみたいなもの8本も乗っけた頭を想像してもピンとこないほど日本では珍しいコトリだ。ギンムクと共に一度見てみたいものだ。 

「今エビ網をセットしてきたんだ。一人じゃ出来ないからよ。引き上げるのは明日だ。それじゃあな」

いつの間にか、彼はまた漁師稼業に戻ったと見える。体が動くうちは仕事、仕事だ。それが人様の道なんだ、と言っていた既に鬼籍に入った人の顔が浮かんだ。