伊豆稲取便り

「ピーティ」 ベン・マイケルセン 作　　千葉茂樹 訳

脳性麻痺は、作者があとがきで書いているように、「生まれてきた子どもの脳神経になんらかの損傷が生じたことによって運動機能に障害が起こる症状」です。いわゆる奇形児などがそれですが、肝腎なのは知的障害とイコールではないということです。

しかし、奇形児を見る私たちは重い知的障害者、すなわち考える力のない人と同類だと思い込んではいないでしょうか？　医療の世界でも随分長い間、そうした誤解から精神疾患者や脳性麻痺の人たちがひとまとめに施設に隔離されていたそうです。

この本はピーティという名の脳性麻痺の子が偏見や誤解にも屈せず、自分自身の人生を生き切った物語です。感動を呼ぶのは、彼を理解するに至った看護師や看護助手が周りの偏見にも拘らず、彼を一人の人間として扱い世話をすることです。作者は美人看護師を登場させて二人の愛情物語まで描いています。

その美人看護師、キャシーの言葉がすべてを言い切っています。「（彼は）自分の人生を、信じられないほどの感謝の思いで受け止めてるの。人生の大半はつらいことばかりだったのにね」

ピーティが幸せな人生を送ることが出来た理由の一つにトレバーという若者との出会いがありました。それも実はピーティの人柄に起因するのですが、いずれにしても、トレバーの働きでピーティは旧友と再会することになります。

そして最後にピーティとトレバーの感動的な別れ。そこには若いトレバー自身がピーティとの出会いを通じて友だち、家族、人生の意味を探り得た喜びがありました。