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あらまき―下2023/12/02

話しは散歩の話から始まった。どこまで行くのかと聞かれて、「あらまき」を突っ切って水下から見高に通じる旧道に出、その先を下って志津摩に降りると答えると、彼女は一度志津摩川の橋まで歩いたことがあると言う。この農免道路も見高のブルーベリー農園を良く往復するとのこと。距離は2キロ弱だが、上下の多い坂道なので、かなり鍛えられるコースである。実は彼女の夫が脳卒中で倒れ、数年後に他界した後、健康に留意するようになってから歩くようになったのだそうだ。

そんな折にふとしたことからボーリングに興じるようになり、コーチを受け始めてからはメキメキ上達してマンスリー競技で3回も優勝するようになった。ところが、そのコーチ役の名前を聞いて驚いた。私の隣近所で、しかも山仲間5人衆の一人だったのだ。残念ながら彼もこの夏、肺ガンを患って他界してしまった。 

彼女の居宅は「あらまき」を見下ろす高台にある。前庭からの眺めが秀逸で、幾つも並んだ園芸ハウスが眼下にある。私は得意になって、ハウスの一つを指さしながら知り合いの名を挙げた。次回お会いすることがあったら、知り合いの古老のお話もしてみようと思う。彼女と同族の一人だから、或いは縁のつながる人かもしれない。茶の平遺跡で出土した石器などもご存知のはずだ。それに、「あらまき」は「新巻き」なのか、「荒巻き」なのか、ご主人はどう言っていたか聞いておかねばなるまい。

庭に深紅のフクシャという花があった。かなりまとまって咲いている。小さな黒い実を釣鐘のように吊り下げて可愛らしい。これは無くなったご主人が大切にしていた植込みだそうだ。故人と繋がる花が庭にあるというのは彼女にとって幸せである。庭仕事に弾みが掛かることだろう。家全体の土台を覗き込みながら彼女が言った。「この石積みはしっかりと上物を支えてくれているの。職人技が際立っているわ。そのかわり所々に生え出て来る草を取り除いてあげなきゃね。これが私の仕事」私は頷きながら通りに面した庭を覗き込んだ。見るからに手が入って整然としている。思いきって切ったという雑木の切り口が何となく絵になっている。この人の顔が生き生きとして明るい感じなのは、やっぱり土に親しんでいるからに違いない。それに環境も良い。娘さんは結婚して埼玉にいる。夫を20年もの間介護したあげく一人残されたが、決して寂しいなどと言うつもりはない。今年70才の大台に入ってこれからは自由に生きたい、と彼女は言った。前途に幸あれ!


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