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海の男2021/10/27

     (市場を通して見た対岸に今の「道祖神」が祭られています)

東区の元「道祖神」が在った辺りで、お年寄り数人がタムロしていているところを通りかかりました。そこで、すかさず萬七(仮名)さんは元気かと聞いてみたのです。すると、中の一人が「オレが案内してやるよ」と言って立ち上がるや否や、先に立って歩いて行くではありませんか! 

彼は自分から漁師ではなく職人だったと言ってましたから、多分、大工さんか左官屋さんだったのでしょう。どちらだったか聞くタイミングを逃して、間もなく萬七さんのお宅まで来てしまいました。お蔭で久しぶりに萬七さんの顔を見ることが出来ました。感謝! 

萬七さんは御年87才。玄関に出てきた顔の何と肌つやの良いこと!元気、元気!聞けば、今でも朝8時には散歩に出かけると言います。それも自転車をお供にです。漁師を引退してから彼は自転車に乗るのではなく、引いて歩くのを習慣にしていました。少なくとも、私がお会いした時はいつも自転車を脇に転がしながら歩いていました。 

稲取漁港に繋留されている主な漁船は2級(5トン以上100トン未満)と3級(5トン未満)ですが、彼の持ち船は大きいほうの2級船でした。引退してからは船揚げ場に居座る日が多かったのですが、利島(神津島?)の知り合いに譲ったのが3~4年前でしたか、それからは彼もきれいさっぱりとこの業界から足を洗い、今は何の憂いもなく日々の生活を楽しむご隠居さんでした。 

会うと必ず聞かせてくれる漁の話を今回も歯切れのよい声で披露してくれました。特にこの稲取近海のサンゴの話には驚きました。キンメは深海魚ですから、釣り糸に錘(おもり)が必要です。彼の現役時代は適当な大きさの石に釣り糸を巻き付けたと言います。この同じ石を毎度使っていると、何時の間にか石の表面にサンゴが根付いたというのです。今は金棒を使っているが、当今、騒がしくなってきた環境問題を考えると、海の底に沈んでしまっている金棒が山ほどになっている現状が嘆かわしい。自然石を使った昔がいとおしいとも。 

相変わらず自説を鋭く展開する意気込みは昔と少しも変わっていません。そんな彼に改めて敬意を表したいと思います。