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「縞模様のパジャマの少年」2009/07/28

サフランもどき
「縞模様のパジャマの少年」を読みました。
少年ブルーノの一家は突然、ベルリンの大都会から他に一軒も家がない寂しい場所に引っ越しします。軍人の父親の新しい任務のためでした。

そこでは友達になるような少年がひとりも見当たりません。ところが、ある日ある場所で縞模様のパジャマを着た、痩せて骸骨のような少年とフェンス越しに出会います。生年月日がまったく同じでした。

フェンスの中は実はユダヤ人を集めた強制収容所でした。そこでは人間らしい扱いがなされていません。突然多くの人が消えてなくなったりします。そしてブルーノの父親はその司令官だったのです。

ブルーノは毎日その場所へ行き、その少年と仲良しになります。しかし、純真無垢なブルーノにはフェンスがどういう意味を持っているのか、フェンスの中の人たちがどういう暮らしをしているのか理解ができません。

そのうちに、別れのときが来ました。父親を残して母、姉と一緒にベルリンに帰ることになったのです。折角出来た友人と別れなければなりません。そこで、最後の別れの日に一計を案じます。

少年に同じ縞模様のパジャマを別に持ってきてもらい、それを着てフェンスの中に入るのです。しかし、少年と一緒に収容所の生活を目の当たりにして、ブルーノは愕然とします。そして、あろうことか、同じパジャマを着ていた彼は少年と一緒にガス室に送られてしまうのです。

その後、収容所の司令官である父親は、ブルーノが着替えに脱ぎ置いた洋服の近くで、フェンスの下に子どもが出入りできる隙間があることを発見します。そのことから、自分の愛する息子が迷い込んだ運命を悟るのです。

悲しい結末は作者の下した厳しい審判そのものです。そのことによって、この歴史上の大悲劇をいっそう悲惨なものにしています。

本書は高校生の今年の課題図書に指定されています。一般の人も是非読んで欲しいと思います。

「縞模様のパジャマの少年」ジョン・ボイン作、千葉茂樹訳 岩波書店発行 1,800円