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「御殿場・小山の伝説」2013/07/25

「御殿場・小山の伝説」勝間田二郎 著

伝説や伝承は教訓に富んでいます。それはその時代を担ってきた人々の生活と知恵が織り込まれているからとも言えます。「御殿場・小山の伝説」はそんなお話が26話披露されており、続巻を入れると全部で46話にもなります。

本書の「はしがき」で著者の勝間田二郎さんは、ここに登場してくる場所は伝説となるにふさわしい場所だと述べています。ですから、一つ一つの物語を頭に入れながら、それぞれの場所を訪ねてみるのは意義のあることだと思います。

お話の中に「乙女峠」があります。孝行娘が父親の病気治癒を祈って願掛けする話です。娘は願掛けの山中で雪の吹き溜まりにはまって凍死してしまいます。かつて私は箱根の山に通いつめたことがあり、金時山に登った帰りに乙女峠に下りたことがありました。

乙女峠は富士見の3景勝地の一つに選ばれているそうですが、今や遠い昔のことでその記憶は全くありません。それより、そこから仙石原まで長く辛い車道歩きをしたことのほうが懐かしく思い出されます。そんな乙女峠に悲しい伝承があったこともすっかり忘れていました。

その他に明神峠、三国峠、大洞山などの地名が出てきます。いずれも丹沢の懐かしい山々で、四六時中、山歩きにうつつを抜かしていた頃を思い出しながらの楽しい読本でした。

なお、みくりやの方言集と地名の由来が巻末に載っています。特に地名の由来は大変参考になりました。本文の46にも及ぶ伝承の記録といい、丹念に拾い集めるご苦労はさぞかしと思ったことでした。