伊豆稲取便り

伊豆東部総合病院の脇の坂道は多くの稲取の人たちが小学生の頃、“水乗り”への遠足で登った道でした。新宿のＳさんもその一人で、喜寿を迎えた今でも月に２回はこの坂からクロカンコースへ向かうと言います。

それというのも、先祖のお墓にお花やシキミを手向けるため、水乗りを歩いて採取する目的があるからだと言うのです。たまたま肩を並べてこの坂を上りましたが、息を切らすことなく、早からず遅からず流れるようなスムーズな歩き方で実に元気そのもの。

普段は夜が明けると同時に立野の畑へ出向き、一仕事をしてから帰宅して朝食を摂る生活を長年続けて来られたと聞き、なるほど健康の秘訣はこれだなと思ったのでした。オナカを空かして食事をする。つまり、無為にして時間が来たから食事するというのではないのです。

子どもたちはもうこの年にして無理して野良仕事をすることはない、畑を処分してのんびり過ごしたらいいと言うが、とんでもない。先祖から引き継いだ土地はオレの代で絶やすことはしない。歩けなくなるまで畑へ通うのだと、その意気や益々軒昂たるものでした。