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”アマガエル”の海上格納2015/09/02

稲取港
戦時末期にアマガエル(ベニヤ製のモーターボートで爆雷を搭載した神風特攻艇)を格納した塹壕の跡は成就寺の裏手に今も残っているように、向井の山縁りには幾つかあったと聞いています。ところが、それが港のど真ん中にもあったと聞いて驚きました。

Yさんの父君は漁師で特にアワビなどを獲っていましたが、その当時、当局の依頼で港のど真ん中に屋根付きのヤグラを立てる仕事を拝命しました。場所は現在離岸堤の近くにある生簀辺りです。目的は、敵の目に触れないように屋根の下に特攻艇を浮かばせることでした。

港の中は水深がいくら浅いといっても、4~5メートルはあるでしょうから、そこに掘っ建て小屋を建てるのは容易ではなかったと思います。Yさんの父君は親方として多くの作業員を指揮してこの仕事にあたりました。当時彼は縄船の船長としても活躍し、全国からやってきた作業員たちを取りまとめていたのです。

しかし、結局はこの特攻艇は出撃することもなく終戦を迎え、間もなく取り壊しとなりました。そして廃材の払下げを受けた彼はその材木を使って、Yさんのために家を建てたのです。つまり家が一軒建つほどの大量の柱を海中に設置したのでした。

アマガエルの格納は防空壕の中だけでなく、港内の海の上まで利用していたとはまさにオドロキです。