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ミカン畑の石祠2012/10/29

中川の畑のOさんはいつも朝が早い。きょうも一仕事終えたのでしょう、軽トラの傍らで魔法瓶のお茶を飲んでいました。地面の上にそのまま腰を下ろしています。

「うちの孫ジイサンはオイナリサンだと言ってたなあ」

このミカン畑の一角に石祠があって、毎年10月の好い日にお神酒と団子をお供えしているんだそうです。団子は挽いたお米を使うとのこと。

「どういう神さまを祀ってるのか訊いたこともなかった。祠の中を開けても何も入ってなかったがね」

昔、このミカン畑一帯はみな田圃で、Oさんのご先祖は収穫したばかりのお米をお団子にしてお供えし、神さまに感謝の意を捧げたのでしょう。そして五穀豊穣を祈ったのでしょう。お稲荷さんは元々穀物・農業の神さま、稲荷神を祀ったものだそうです。

その石祠の屋根の部分が欠けてしまっていたため、先年、Oさんは新しい石祠に替えたというので、見せてもらいました。石垣が何重にも築いている段畠の上の方にあります。

バランスを崩すと転がり落ちるような径を辿ります。みなさん農家の方はお歳を召しておられるのに、こんなところを自在に往復しているのですから尊敬しますねえ。

小さな石祠らは小高い所に鎮座していました。一見して普通の祠で、お稲荷さんとは分からないものでした。しかし、毎年、お供えをして神さまに感謝する敬虔な気持ちこそ大切なものです。Oさんの家内安全と五穀豊穣の祈りはこうして後々まで続いてゆくことでしょう。